映画『晩春』で発揮された、原節子のキラキラ感

 

前田敦子がエッセイ『前田敦子の映画手帖』で「特に好きな映画」と語った小津安二郎監督『晩春』。最近では、カンヌ国際映画祭で上映された『海街Diary』への海外からの評価も「小津映画のようで素晴らしい」というものが多く、あらためてその偉大さを実感させられる小津安二郎監督の代表的な映画である。

1949年の戦後間もない頃に公開されたこの映画は、娘の結婚を巡るドラマなのだが、小津作品のスタイルを確立した作品であり、小津監督が女優の原節子と初めて組んだ映画でもある。これ以降、原節子は小津監督の作品で輝かしい女優として活躍したのである。『晩春』で原節子が演じる主人公は「紀子」という名前なのだが、小津監督の『麦秋』、『東京物語』のヒロインも「紀子」という名前だったため、この3作品を「紀子三部作」とも呼ばれている。

前田敦子も『晩春』を見て原節子に魅了されたようで、エッセイにも書かれている。いくつかの場面とともに紹介したい。

前田:「ゆっくり、「ただいま」と言いながら自宅に帰ってくるだけのシーンでも、私はワクワクしちゃいます。玄関から入ってきた瞬間とかに、「あ、帰ってきた!」って。」

晩春-原節子-玄関シーン

『晩春』では、原節子演じる紀子が帰宅するシーンが多いが、毎回玄関のこのアングルで映されている。

前田:「それと、(原節子の)アップになった時のキラキラ感がすごい。同時代のハリウッド女優にも通じる圧倒的な存在感を放っています。」

原節子-晩春-自転車シーン

上記は自転車に乗って海に向かうシーンだが、笑顔で「キラキラ感」が際立っている。

前田:「そのキラキラした笑顔のまま、「おじさま、きたならしいわあ」とかきついセリフを言う(笑)。それがまた、かわいらしくていいんです。

原節子-晩春-おじさまとのシーン

飲食店で繰り広げられる、おじさまとのやり取りの中で発されるお茶目な表現。上映から16分目あたりのシーン。

なお、この映画のクライマックスシーンは、父と娘で京都旅行した際、就寝する前の会話で、紀子が「お嫁に行きたくない。お父さんと一緒にいたい。」と言い、それを父がなだめるシーンかもしれない。その原節子の演技に、全国の男性の心はわしづかみにされたことだろう。女性が「相手の必要性を伝えること」が、男性が最も喜ぶことだと思うが、それを見事に表している。

<映画『晩春』詳細>

・公開年:1949年
・監督:小津安二郎
・脚本:野田高梧、小津安二郎
・原作:作家 広津和郎『父と娘』(熱海滞在中に書いた小説)
・製作:山本武

・出演者
原節子
笠智衆
月丘夢路

・上映時間:108分

前田敦子はエッセイで「何か特別なことが起こるわけではない、普通の日常を描いたような映画が好きなんです。」と語っているが、まさにこの『晩春』はホームドラマをありのままに描いている、このスタイルは、後のテレビ全盛時代に登場するホームドラマのスタイルに大きく影響を与えていると思う。

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