映画『異物-完全版-』の公開初日舞台挨拶が2022年1月15日、東京・渋谷のユーロスペースにて開催され、出演者の小出薫、田中俊介、吉村界人、田中真琴、そして、宇賀那健一監督が登壇した。全員、黒を基調とした衣装での登場だ。作品に登場した”異物”も舞台に現れ、会場をわかせた。
本作は、映画『黒い暴動♥︎』『サラバ静寂』『転がるビー玉』の宇賀那健一監督が手掛けた短編映画『異物』から始まる、 4つの短編作品が繋がった長編作品で(『異物』、『適応』、『増殖』、『消滅』)、いよいよ同日からユーロスペース渋谷ほか全国順次公開となった。『異物』シリーズは、トリノ映画祭、モントリオール・ヌーヴォー・シネマ映画祭、エトランジェ映画祭などを筆頭に、米国アカデミー賞公認映画祭3つ、英国アカデミー賞(英国映画テレビ芸術アカデミー)公認映画祭3つ、カナダのアカデミー賞(カナダ・スクリーン・アワード)公認 映画祭2つ、スペインのアカデミー賞(GOYA)公認映画祭1つのコンペを含む(情報解禁前の映画祭を含め)20ヶ国70以上の映画祭及び映画賞で入選しており、注目を集めている。そして、日本に逆上陸となったのだ。
女優の小出薫は、「日本では初めての舞台挨拶で、手の震えが止まらないんですけど、とれも嬉しいです。私は小さい頃から映画が大好きで、映画に出るためだけに役者を志してきました。この一つの目標が叶うのに、なんと15年かかりました。今日、この場で、監督と素敵な出演者の方やスタッフの方と一つの作品を作り上げて、こうして皆さんにお会いできるのが、とても嬉しく思っています。」と喜びを明かした。
撮影現場でのエピソードを訊かれると、小出薫は「“異物”が出てくるシーンで、最初は助監督3人で動かしていたのですが、皆さんが動きにこだわりを持っていて、気づいてみたら、照明部、スタイリストさんまで、“異物”の触手を動かすことに一生懸命で、皆、汗をながしながら、まるで部活みたいな青春感ありながらやっていました。それを監督はモニタールームで見ていて、「これは神々の遊びだ」と笑っていて、ちょっとイラっとしました(笑)」とエピソードを明かした。
本作のタイトル「異物」に関連して、司会者から「一緒に住んでみたい生き物はいますか?」と訊かれると、田中真琴は「私は恐竜です。恐竜が好きなので、恐竜と一緒に生活したいなって思っているんですけど、特に首の長い恐竜が好きです。優しいし、肉食じゃないんで、一緒に住んでみたいです。」と答え、会場の笑いを誘った。
小出薫も「ちょっと田中さんと重なっちゃうところがあるんですけど、ドラゴンを飼ってみたいです。海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』にドラゴンが出てくるんですけど、飼い主にしかなつかないんです。飼い主が『ドラカリス』って一言言ったら、全部火で燃やしてくれるので、最終手段としてもっていたいです。」と明かした。
舞台挨拶の最後に、宇賀那健一監督は「本当に今、コロナで不条理な物事に苦しまれている人がたくさんいらっしゃると思います。でも、人間というのは、そういう不幸な物事に直面したときに成長したり、その中でも幸せを見い出したり、最終的にはもっとつらい出来事だって何かしらバネにして笑い飛ばす力を持っている、と勝手に思っています。この映画はたくさんの映画祭で入選を致しました。それぞれの作品は、ホラーだったり、サイコだったり、SFだったり、といろいろな評価をいただいてきましたが、最終的に「完全版」になった時に、「ラブストーリー」だと言われるようになったんです。僕は、人生はホラーだし、サイコだし、SFだと思っていますが、最終的には、この人達を愛したいなと思って作りました。だから、ラブストーリーになっているんだなと思います。こういう真面目な話をしましたけれど、本当にエンターテイメントだと思っているので、気軽に楽しんでもらえらればなと思ってます。そして、これから口コミで広げていければと思います。感想はいろいろとあると思いますが、嫌いでもいいので存在することをSNS等でお伝えいただければ嬉しいです。きっと、この映画は、映画界の中でも異物だと思いますので、増殖させていきたいと思います」と語り、締めくくった。
世界の様々な映画賞を受賞し、日本に逆上陸した注目の本作が、これから日本でどのように広がっていくか、実に楽しみである。
◎取材・文・写真:ACTRESS PRESS編集部