全国高等学校ダンス部選手権が2年ぶりに実地開催 頂点に立ったのは…山村国際高等学校! 【Reporter:岸田莉香・石川夏南海】

全国高等学校ダンス部選手権

エイベックス・マネジメントが主催する全国の高校ダンス部の日本一を競う大会『DANCE CLUB CHAMPIONSHIP』(全国高等学校ダンス部選手権/以下DCC)は、8月18日に東京・渋谷のLINE CUBE SHIBUYAにて決勝大会を実施。山村国際高等学校(埼玉)が初優勝となった。
DCCは2013年に開催が始まってから今年で9年目を迎える。昨年はコロナによる影響でオンラインでの決勝大会となったが、今年は2年ぶりに本人たちのダンスを生披露した。
今年は、162校のエントリーの中から、36校と台湾から特別に映像で参加した37校がパフォーマンスを披露。
今大会では、ヒップホップなどのストリートダンスよりも、コンテンポラリーやジャズなどのバレエ系ダンスを取り入れるチームが増えた。それに加え、過去に比べて衣装のクオリティーも格段に上がり、「高校生のダンス大会とは思えない。大人のダンサーが身に着ける衣装と大差ない」と審査員をうならせた。
また、ダンスで表現したいものとして、環境問題やコロナ禍から立ち上がる強さをテーマにする学校が多かった。9年もの歴史を持つDCC。回数を重ねるごとにダンスや衣装のレベルが上がり、時代に即して変化、そして進化をつづけている。

DANCE CLUB CHAMPIONSHIP Vol.9(全国高等学校ダンス部選手権)「DCC」とは、
全国の⾼校ダンス部の頂点を競い合う⼤会である。
漢字⼆⽂字のテーマをいかにダンスで表現するかを競う。⽣徒達が⾃ら考えたテーマをどう表現するのか。ここに⾃由な発想を持ち、オリジナル性を追求することが⽣徒達の⼼⾝成⻑に繋がると考え表現⼒を最も重視した審査基準としている。

【結果発表:入賞校(3校)】

<優勝>:山村国際高等学校 「テーマ:情熱(ルージュ)」

山村国際高等学校

ダンスを通して情熱を表現したいという想いから、フランス語で「赤」を意味するルージュをテーマにしたという。
テーマ通り、衣装は全身真っ赤で、女性は肩を見せることでセクシーさを醸し出していた。手袋は、演技中の指先を綺麗に魅せるために効果的な役割を果たしていた。髪の毛にも赤のラメがつけられていて、舞台のライトを浴びるとキラキラと光って舞台映えしていた。

山村国際高等学校
とにかく場面展開が早く、どの場面も一番の見どころと言っていいほど入念に作りこまれた構成で、次は何が起こるのだろうとワクワクさせる工夫がたくさん。男女のペアダンスはどの学校にもない新鮮味溢れるシーンに。また、ムーランルージュの曲のビートや効果音にピタッとはまる振りが本当に気持ちいい。
首の角度や手首の使い方、ラインダンスでのつま先の伸びから色気が感じられ、「細部にまで美を宿らせていたこと」。そしてパッションが感じられたことはもちろん、強さだけではない「しなやかさ」、「余裕さ」があったことが勝因なのではないだろうか。
このチームが演技を終えロビーで写真撮影を行っていたとき、私たちを含めたメディア関係者が、写真に写り込まないように場所を移動するという一幕があった。そのとき、全員が「ありがとうございます!」と大きな声でお礼をしたのだ。ダンスの技術だけでなく、礼儀も大切にしてきたからこそ、ダンスの神様がほほ笑んだのかもしれない。

山村国際高等学校

授賞式
山村国際高等学校

キャプテンの鈴木春花さんは「このみんなと楽しんで踊れたことがとても嬉しいです。本番前からステージに上がる直前までのモチベーションの上げ方をみんなで工夫して考えていました。ステージへの持っていき方が上手くなったと思います。練習では、マスクで相手の表情がよく見えないからこそ、思っていることはちゃんと伝えて、コロナ禍であっても絶対に全国制覇すると決めて練習を重ねてきました。サポートしてくださった皆さんに感謝を伝えたいです」と喜びを伝えた。

山村国際高等学校
山村国際高等学校

審査委員長を務めたテリー伊藤氏も、「素晴らしかった。今日の日を誇りに思って生きてください。そして次回のパリ五輪ではいよいよダンスが正式種目になる。ここにいる方々から日本代表になる人が出てくる」とコメント。またSAM氏は「きれいに揃えるだけでなく、内側からおどって躍動し、空気を動かしていた」と称賛した。

全国高等学校ダンス部選手権

<準受賞>:帝塚山学院高等学校「テーマ:心燃(しんねん)」

帝塚山学院高等学校
テーマには、1年延期された東京オリンピックへの思いが込められており、選手たちの苦悩を力に変えて私たちが火を灯したいというエールの気持ちを表現した。
衣装は赤と白の2色使いで、日本の国旗をイメージしている。背中の部分が大きく開いているデザインが印象に残った。
最初の20秒は後ろ向きでの演技だったが、顔が見えていないにも関わらず後ろ姿からも表情が伝わってきて、まさに“背中で語っている”ようだった。全員が正面を向いた時の目力の強さで一気にこの曲の世界観に引き込まれ、なにか神秘的なものを見ている気持ちになった。

帝塚山学院高等学校
リフトの回数が他校と比べて圧倒的に多く、奥行きよりも縦の空間を使って高さで魅せる構成が特徴的。なかでも1人の背中の上に乗って片足を上げるアラベスクのシーンは息を呑むほど美しかった。
開脚ジャンプやY字バランスなど、柔軟性が試される技を連発し、それらがオリンピック競技の体操やアーティスティックスイミングを連想させた。

帝塚山学院高等学校

<3位>:大阪府立登美丘高等学校 「テーマ:嘘貌(いつわり)」

大阪府立登美丘高等学校
2017年のDCCにて「バブリーダンス」で優勝を果たし、女優・伊原六花さんを輩出した高校。テーマには、新体制になり今まで背負ってきた期待やプレッシャーを全部捨てて、新しい私たちを見てほしいという想いが込められている。

大阪府立登美丘高等学校

衣装はベージュ一色で、Tシャツに短パン、そして靴下というシンプルなもので、衣装には一切頼らないという強い意志が感じられた。
服の胸の部分を引っ張る振り付けや、しゃがんで下を向く動きなどが彼女たちのこれまでの苦悩をよく表していた。一番特徴的だったのは4列に並んでウェーブを作るシーン。邪念に飲み込まれていく様子が見事に表現されていて鳥肌が立った。また、全員で同じ振りをすることが多かったため、どのチームよりも一体感があり、全員で困難に立ち向かってきたことを感じさせるパフォーマンスだった。後ろ向きでしゃがむメンバーたちの中で、1人だけが立った状態で正面に手を伸ばしたところで曲が終了。あの手は、最後に真実をつかめたのか。それともまだ偽りのない自分を探しているのか。観客に想像させ、時間が経っても考えてしまうような、強いインパクトを残した演技だった。その答えを知るためにも、今後の登美丘から目が離せない。

大阪府立登美丘高等学校

【受賞者:特別賞】

<ニチレイフーズ賞>
日本大学明誠高等学校 「テーマ:再起(シューティングスター)」
日本大学明誠高等学校

日本大学明誠高等学校

衣装はシンプルなものだったが、流れ星を見た時に希望を感じるというテーマに沿って、目の下にストーンをつけていたのが印象的だった。3列に並んで手を動かす振りのシーンでは、指先までそろっていて、一体感があった。

<Chiyoda賞>
鎮西高等学校 「テーマ:音楽(へいわ)」

鎮西高等学校

鎮西高等学校
衣装は青がメインになっていて、迷彩柄のズボン、肩パットがしっかり入ったジャケットや統一された三つ編みは、使用していた楽曲の歌い手AIのイメージにピッタリ。ジャケットを脱いで後ろを向くと、白いTシャツの背中の部分に虹とピースサインが描かれていて、彼らの平和への願いが詰まっていた。また、振りの一つ一つに力がこもっていて、観客の魂に訴えかけるダンスだった。ダンスが終わった後のトークタイムで、メンバーの一人が発した「音楽やダンスは世界共通言語だ」という言葉は印象深い。

<TOKYO HEADLINE賞>
日本体育大学荏原高等学校「テーマ:天体(グローバルウォーミング)」

日本体育大学荏原高等学校

日本体育大学荏原高等学校
緑や青を基調にし、森の妖精を思わせる衣装だった。
前半は地球温暖化が進んでいることを危惧した険しい表情で激しいダンスが繰り広げられていたが、後半は笑顔が多く、明るい未来が来ることを表現していて、その差がとても印象的だった。腰につけていた青い布を持って踊り始めてからは、その布が風でなびく様子が自然の美しさを表しているように感じた。

<AWA賞>
千葉敬愛高等学校 「テーマ:儚駆(ドリーマー)」

千葉敬愛高等学校

千葉敬愛高等学校
まさに映画「ドリームガールズ」の世界観にピッタリの華やかな衣装とダンスだった。最初は黒のジャケットを着ていたが、中盤でピンクの衣装に変わる早着替えのシーンは圧巻。夢の世界の輝かしい部分だけでなく、儚さも感じさせる見事なパフォーマンスだった。

【DJTIME】

DJ KOO
DJ KOO

大会の最後には、DJ KOO氏によるDJタイムも実施。参加各校のダンサーが入れ違いに出演し、フリーでパフォーマンス。本番ではライバル同士だった生徒同士が、ダンスという共通言語を通して魂を共鳴させ合った。
突然始まるダンスバトルは見応え満点。DJ KOO氏の「ここでは勝ち負け関係ないから!」という言葉で会場が一体となった。さらに、ニチレイキャラクター、イタメくんの可愛いらしいダンスが高校生たちの人気を呼んだ。

■DANCE CLUB CHAMPIONSHIP Vol.9(全国高等学校ダンス部選手権)

決勝出場チーム36校
<シード>
同志社香里高等学校(翔破:しょうは)
帝塚山学院高等学校(心燃:しんねん)
三重高等学校(二重:ニジュー)
鎮西高等学校(音楽:へいわ)
大阪府立登美丘高等学校(嘘貌:いつわり)

<東北・北海道地区>
北星学園女子高等学校(燦々:さんざん)

<関東地区>
駒澤大学高等学校(砂漠:かわき)
千葉敬愛高等学校(儚駆:ドリーマー)
千葉県立松戸六実高等学校(闇輝:めいあん)
千葉県立四街道高等学校(夢幻:ワンダーランド)
東京都立王子総合高等学校(紫炎:むらか)
東京都立福生高等学校(彩架:にじ)
東葉高等学校(魂奏:コンチェルト)
日本体育大学荏原高等学校(天体:グローバルウォーミング)
日本大学明誠高等学校(再起:シューティングスター)
武南高等学校(灯火:しんねん)
宝仙学園高等学校女子部(足跡:ヒストリー)
山村国際高等学校(青華:アイリス)
山村国際高等学校(情熱:ルージュ)

<中部地区>
愛知県立昭和高等学校(螺旋:らせん)
安城学園高等学校(銀弾:シルバーブレット)
安城学園高等学校(脱出:プリズンブレイク)

<関西地区>
上宮高等学校(究極:アルティメイト)
上宮高等学校(音遊:ビート)
大阪市立汎愛高等学校(響神:ふうじんらいじん)
大阪府立阿倍野高等学校(熱誠:ねっせい)
大阪府立和泉高等学校(華族:かぞく)
大阪府立柴島高等学校(逃獄:ディザイア)
大阪府立堺西高等学校(輝煌:きこう)
関西学院高等部(闘舞:ウォーリアーズ)
樟蔭高等学校(黒鳥:ブラックスワン)
羽衣学園高等学校(竜胆:リンドウ)

<中国・四国・九州>
高知中央高等学校(越弾:おーばーしゅーと)
創志学園高等学校(森宴:シンエン)
北九州市立高等学校(風船:バルーン)
第一薬科大学付属高等学校(威風:いふう)

DCC
「DCC」公式サイト:
https://dcc.jsda.info/

【感想】

コロナ禍で練習にも厳しい制限があった中、絶望するのではなくできることを探し、この状況だからこそ創れる舞台を目指して努力してきた生徒の皆さんの姿に、大きな勇気をもらいました。現在はソーシャルディスタンスが叫ばれ、人と人との距離を保つことが重要視される世の中ですが、舞台上でダンサーが密集したときの迫力は言い表せないほどのものであり、人が集まることで生み出される力は本当に大きいのだと気づかされました。また、生徒の方々の大会に懸ける熱い想いに触れたことで、今までの練習の成果を発表する場所があることがどれだけ重要なのかを痛感しました。感染が拡大している今はエンターテインメントが苦境に立たされていますが、先行きの見えない状況だからこそ芸術の持つ力を信じたいと思いました。(岸田莉香)

今回初めて取材に参加させていただきました。振り付け、衣装はもちろん素敵でしたが、踊っている生徒さん一人ひとりの表情、そして眼差しに圧倒されました。テーマ、伝えたいこと、ここまでの道のり、すべてを込めた大きなパワーが、爆発するように表現されているのだと思います。また、DJタイムでは私も高校生の皆さんの一体感に飲まれて、一緒に楽しんでしまいました。(石川夏南海)


▼リポート動画はコチラ♪

岸田莉香(中央大学)・石川夏南海(日本大学芸術学部)ACTRESS PRESS REPORTER(リポーター)

◎ACTRESS PRESS編集部
・取材・文:左~岸田莉香(中央大学)・右~石川夏南海(日本大学芸術学部)
<Sckettoリポータープロジェクト>
https://twitter.com/scketto1

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