2025年2月21日(金)より、UPLINK吉祥寺をはじめ全国の劇場にて、堀井綾香監督による『飛べない天使』が公開される。今回は、満を持した劇場公開に先立ち、W主演を務めた福地桃子(優佳役)と青木紬(聡太郎役)、そして監督の3名に、本作に込めた想いや撮影時のエピソードについてお話をうかがった。
【ストーリー】
「ある真夜中、偶然再会した優佳と聡太郎。孤独な二人の不思議な逃避行が始まる——。」
優佳(福地桃子)は会社の飲み会からの帰り道、枕を抱えて商店街を駆け抜ける青年(青木柚)を目撃する。彼のまわりには白い羽根が舞い、まるで天使のように去っていった。その後、再びその青年に遭遇する。聡太郎と名乗る彼は、どうやら病院を抜け出してきたらしい。行きたいところがある、と無邪気に優佳を連れ出す。都会に疲れた女性と孤独を抱えた青年の不思議な逃避行が始まる——。
【インタビュー】
左より、堀井綾香監督、福地桃子、青木柚
劇場公開を控え、主演の福地桃子と青木柚、堀井綾香監督に3名のリポーターがインタビューを実施した。
Q)映画『飛べない天使』の公開が近づいてきた今の心境をお聞かせください。
堀井監督:「以前に、映画祭と下北沢で2週間限定上映させていただいて、いつか『飛べない天使』の本公開を迎えたいという気持ちが凄くあったので、今回その機会を設けられてとても嬉しく思っています。」
Q)監督が作品の中で特にこだわったポイントを教えてください。
堀井監督:「優佳と聡太郎が出会い、一緒に旅をして時間を共有する中で、2人がどういう風に変化していくのかとか、この2人だからこういうことが起こったんだよねっていう部分を結構意識しながら作品を撮りました。そのあたりを映画館で観て楽しんでいただけたら嬉しいです。」

Q)本作品は、2年前に静岡県伊東市にて、年の瀬に撮影が行われたと伺いました。当時の撮影のなかで1番印象に残っているエピソードを教えてください。
堀井監督:「年の瀬に撮影したのでとても寒かったです。(W主演のおふたりは)特に厚着もさせてもらえず、衣装がパジャマでね。あとは、楽しいシーンを撮らないといけないのに2人とも鳥が苦手だったなぁ。」
青木:「あぁ、船ですよね。」
堀井監督:「そう。遊覧船のシーンではカモメが飛んでいるんですけど、すごく長く撮ったのに(2人とも)怖がっちゃって!全然使えなかった。」
青木:「餌付けするシーンがあって、(福地さんに)普通にしているの難しかったよね?
ぜんぜん。」
福地:「聡太郎らしからぬ感じだったね。」
堀井監督:「そのへんも含めてすごい楽しい撮影だったなと思っています。」
福地:「伊東市での撮影は連続で、6月の梅雨の時期と今回は年の瀬だったので、別の作品ですが続けて伊東市に訪れるというのも含め、ご縁があるなと思いました。違ったエリアでの撮影だったので、自分の中での伊東市のイメージが広がった作品でしたし、もっと知りたいくらい、行けば行くほど好きになる場所です。(堀井監督をみて)居心地がすごくよかったですよね。」
堀井監督:「うん。ノスタルジックな雰囲気が漂っていて、町自体も幻想的な感じがあって、それが『飛べない天使』にすごく合っているなと思って、ロケ地になったポイントでもあるんです。」
福地:「今回すごく好きだった場所が、町中華があるエリアで、喫茶店とかが並んでいる所で。その街の温度を感じられる場所を2人で歩いて、そこのセリフも台本にはないような話をして、自分たちの会話が混ざってくるような普段の生活と役の間を生きているようなシーンだったので、すごく自然体でいられた思い出ですね。あとは、堀井さん(=監督)が泊まられていたホテルの近くの喫茶店に行って、撮影が始まるちょっと前に役について話したりとか、撮った映像を見たりだとかっていう思い出もありますね。」
堀井監督:「よく覚えてるね。」
福地:「はい、覚えてます。あとは、電車にも乗ったね。」
青木:「そうだね。電車にも乗ったし、あとは最初の商店街の走るところとても印象的で。あれがクランクインだったんですけど、持っている枕と優佳がぶつかって羽が広がるところ、一発しか撮っていないのに完璧に(羽が)福地さんのところに舞って。あの感じは、『わ、飛べない天使はじまった』って思った、特に印象的なシーンですね。」

Q)次に、福地さんは堀井監督からのお手紙をきっかけに参加されたということでしたが、受け取られた時はどのような心境でしたか。
福地:「 (堀井監督は) 今回がはじめましてだったのですが、以前から作品を見てくださっていたという事を伝えていただき、「今年撮ろうとしている映画があって、その映画にぜひ出演していただきたいです」といった、なぜこのタイミングだったのか、巡り合わせだなと感じました。お手紙をもらうことに対してのときめきもありましたし、とっても嬉しかったですね。そういった経験も初めてだったので、企画の段階から携われるというのはとても貴重な経験だと思いました。」
Q)お手紙という形式を選ばれたのは理由があったのでしょうか。
堀井監督:「そうですね。お会いしたことがまだなかったから、どうしたらこの気持ちが伝わるんだろうと思って。メールだと伝わらない気がしたので、とりあえず自分の想いを書いて、それを読んで決めていただければなと思って、手紙を書きました。」
福地:「あとは堀井さんが、「聡太郎の役はミニシアターで働いていた時のことと重なるんです」という事も書いてあって。それは今でも心に残っています。優佳という役を通して、堀井さんという人を知りたい、ご一緒してみたいと思いました。」
堀井監督:「めっちゃ嬉しい。そうですね。生きづらさを抱えた誰かにこの物語が届いたらいいなと、何か少しでも心が軽くなればいいなと思っていて。自分が『あれもしなきゃこれもしなきゃ』と詰まったときには逆の発想をするようにしていて、『逆にやらない方が面白いかも』みたいに。これは、優佳と聡太郎の関係性にすごく近い気がしていて、なので優佳みたいに心をすり減らすときもあるけど、自分が誰かにとって聡太郎みたいに手を差し伸べてあげられるような存在でもありたいという、自分の中の2人を投影させた映画になっている気がします。」

Q)初共演だったという福地さんと青木さん。お互いの第一印象を教えてください。
福地:「この部屋だった?」
堀井監督:「読み合わせの時だね。(青木さんが福地さんに)お会いしたかったですって言ってたよ。」
青木:「元々拝見していたのでお会いしたいな思っていたんですけど。どうだったかな。その後の会話が多すぎて。」
福地:「ね。第一印象を覚えてないくらいだね。」
堀井監督;「会ってから印象変わったってこと?」
青木:「いやそんなに変わってはないですね。」
福地:「そんなに撮影期間も長くはなかったのですが、すごく自然体でいてくれて、今の距離感と近いところでお話しできた感覚があります。そんなことない?」
青木:「そんなことある。福地さんの第一印象は、穏やかな印象は今も変わらずずっとあるんですけど、最初はどんな言葉・考えが頭の中で渦巻いているのか分からなくて、不思議な雰囲気の方だなと思ってましたね。でも会話を重ねていくと、その言葉の節々にユーモアを感じるというか。すごく静かなイメージがある反面、いろんなアンテナがある方で。」
堀井監督:「奇想天外だよね。」
青木:「そうなんですよ。結構ワイルドじゃない?みたいな。どこにでもアクティブにいけそうな方だなっていう新たに知れた部分はあります。」
福地:「たしかにそうかもしれない。空き時間にも、ホテルの自転車の貸し出しが2つしかなかったので、たまたま2人で借りて、みんなが買い出しにいけない分、和菓子屋さんに行って差し入れしようとなったり。」
青木:「結構あれも映画だったよね。俺は衣装のパジャマのまんまで。」
福地:「自由に散歩したりとか、結構わんぱくな感じだったね。」
堀井監督:「いいね。差し入れ確かに持ってきてくれたね。私は、深夜に1人でチャリ飛ばして銭湯行きました。」
Q)撮影の合間も「優佳」と「聡太郎」の役のままでいられたというお話を伺ったのですが、実際に撮影の合間ではどんな雰囲気でしたか?
福地「柚くんの落ち着いてるなって見える瞬間もあれば、興味に素直な瞬間もあって、それが素敵なところだなと感じました。」
青木:「役としてっていうよりは自然とお互いのトーンが静かだったり、楽しかったりで心地よかったです。(撮影の合間も)役と離れすぎずにいられたと思います。」
Q)演じられた役とご自身の似ているところや違うと思うところはどこですか?
青木:「僕は聡太郎と似ている部分は多いと思います。聡太郎のキッズな部分が自分にもあるので、聡太郎を演じる時はフラットに居られました。子供のように遊びながら、どこかで俯瞰してしまうところは共感しましたね。
堀井監督:「(福地さんは役を演じることに)結構苦戦していたよね。」
福地:「そうですね。優佳の抱える『孤独』について、堀井さんが感じているものと自分の感じ方が微妙にずれているような気がしていて、「東京」という場所も、出会い方ひとつで、言葉の印象も変わってくるなと思ったりして、聡太郎との出会いを通してどんなふうに変化していくのかなどを、たくさんお話しました。」
Q)作品中ではどこか遠くに行きたい2人が描かれていますが、お二人は今行きたいところはありますか?
福地:「国内旅行にすごく惹かれます。昨年出演させていただいた舞台の公演で福岡に一ヶ月ほど滞在していたのですが、福岡を拠点に車や電車で佐賀や熊本、鹿児島まで行きました。その途中の田んぼ道で一人で歩くワンちゃんに遭遇したのですが、どうしてここを歩いているのか、こちらが少し近づくと離れてというのを繰り返していて。笑
探していたら途中で地元の方たちが来てくれて、友人と地元の人と一緒に探しました。」
青木:「僕はフィンランドに行きたいですね。元々空気感に惹かれていたのと、好きな映画監督がフィンランドの街に映画館をつくっていて。あのミニシアターに生きてるうちに行きたいです!笑」

Q)最後に、映画を観る方へメッセージをお願いします。
堀井監督:「この作品は47分の中編映画なんですけど、 ふと疲れた時にふらっと映画館に来ていただいて、優佳と聡太郎と一緒に旅をしてるような感覚になって楽しんでいただけたら嬉しいです。ただのロードムービーでは終わらない、そのあたりの仕掛けにもぜひご注目ください。」
青木:「旅をしたあの街は、優佳と聡太郎にとって心が守られるような逃げ込めるような場所でした。観てくださるみなさんも、映画自体にいろんなものを委ね、生身のまま観に行ってくれたら嬉しいなと思います。」
福地:「優佳と聡太郎という別々の場所にいる2人の心の声が重なって始まるお話でもあるので、映画を観てくださった誰かの声と、自分たちが演じた役がリンクするような瞬間があったら素敵だな、なんてことを考えながら 公開を私も楽しみにしています。(皆さんも公開を)楽しみにしていてください!」
【プロフィール】

福地桃子
東京都出身。1997年生まれ。
2019 年、NHK 連続テレビ小説「なつぞら」に夕見子役で出演して話題に。近年の主な出演作にドラマ「鎌倉殿の13人」「消しゴムをくれた女子を好きになった。」(22)「舞妓さんちのまかないさん」「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(23)、映画『あの日のオルガン』(19/平松恵美子監督)『サバカン SABAKAN』(22/金沢知樹監督)『あの娘は知らない』(22/井 樫彩監督)など。2024 年には舞台「千と千尋の神隠し」に主人公・千尋役で出演。シス・カンパニー公演舞台「夫婦パラダイス」に出演。
青木柚
神奈川県出身。2001年生まれ。
16年に『14の夜』で映画デビュー。21年公開の『うみべの女の子』でW主演を務め、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞にノミネート。同年米映『MINAMATA-ミナマタ-』でジョニー・デップと共演。『カムカムエヴリバディ』(NHK)、『モアザンワーズ/More Than Words』(Amazon Original)、『最高の教師』(NTV)でもその確かな演技が話題に。主な出演作に、映画『はだかのゆめ』『神回』『まなみ100%』『EVOL~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~』『不死身ラヴァーズ』など。今後も話題作への出演が控えている。

堀井綾香監督
大阪府出身。初監督作『dear TOKYO』(18)がTAMA NEW WAVE、小田原映画祭を始め、STARDUST DIRECTORS film fes.2018賞など多数入選・受賞。コロナ禍に監督したリモート短編がイタリア・ヴェネツィアで開催されたカフォスカリショートフィルムフェスティバル「East Asia Now」で招待上映される。福地桃子・青木柚W主演の中編『飛べない天使』(23)が映文連アワード2023にて部門優秀賞を受賞。
「変化」を共通のテーマとした【青春×ファンタジー映画】二部作『The Night Before』(23)は第33回映画祭TAMA CINEMA FORUMにてワールドプレミア上映が組まれ、同作で劇場公開監督デビューを飾る。
【映画情報】
<劇場公開>
アップリンク吉祥寺 (東京都) 2月21日(金)~
植田劇場 (長野県) 3月21日(金)~
シネマスコーレ (愛知県) 3月8日(土)~
アップリンク京都 (京都府) 2月28日(金)~
第七藝術劇場 (大阪府) 3月8日(土)~
元町映画館 (兵庫県) 3月15日(土)~
X:https://x.com/an_gel_film
Instagram:https://www.instagram.com/an_gel_film
公式サイト:https://www.nuiavan.com/tobenaitenshi
【感想】
–
–
インタビューではお三方の仲の良さがすごく伝わってきて、その仲の良さや、雰囲気がこの記事を通して読者の方に伝わってくれたらいいなと思います。2月21日より順次、全国劇場公開しますので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです!(加瀬優花)
–
◎ACTRESS PRESS編集部
◆インタビュアー・文: 左より加瀬優花(法政大学)・漆間虹美(東京藝術大学)・渡邊遥菜(慶應義塾大学)
◆撮影:仲西一成(Scketto)
◆リポーター記事:https://actresspress.com/category/report/
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。