映画『クシナ』の速水萌巴監督、クシナは不在で撮ることまで考えたが撮影 3 日前に子役を見つけた奇跡を語る

速水萌巴監督(映画『クシナ』)

大阪アジアン映画祭 2018 で JAPAN CUTS Award を受賞し、北米最大の日本映画祭であるニューヨークの JAPAN CUTS に招待され、日本では昨日より公開となった映画クシナ』の監督の速水萌巴が、映画を語る WEB 番組「活弁シネマ倶楽部」にゲスト出演。本作の着想や、こだわりの衣装、アメリカと日本の観客の感想の違いなどについて語った。

速水萌巴監督(映画『クシナ』)

本作の着想については、「19 歳から 20 歳になる時に、母に対する考え方が変わった経験を元にしています。女性が歳を重ねるにつれて変わっていく愛の形だったり、ベクトルを表現していきたいなと思いました。」と話す。

男子禁制の集落を舞台にした理由を聞かれ、「撮影前に、『アナと雪の女王』などが出てきて、物語に男性は必ずしも必要じゃないという構造の物語がでてきていた頃で、私も脚本を書いてみて、男性がいなくても成り立つと思いました。」と回答。
日本には「女人禁制」の奈良県天川村という村があるのは知っているかと聞かれた監督は、撮影当時は知らなかったけれど、後日知ったそう。「私のおばあちゃんが天川村出身なので、私が気づいていないところで繋がってきたと思います。」と驚きの事実が判明した。

ロケ地については、「メインの集落は、東京から 4 時間位かかるところで、集落の内部は、埼玉や東京の内部で撮影しました。」とのこと。

撮影については、カメラマンと話し、「隔離された集落だし、近づきすぎず、あくまでも傍観者としてこの集落を観察しているような撮り方にしよう」と話したそう。
独特な衣装については、「衣装は完全オリジナル。舞台は隔離された場所だけれど、そこに住んでいる人たちは、私たちと同じ現代人で、私たちの感覚を持っている人たちなので、ファストファッションを使い、また、当時祖父母の家から着物が出て、『処分するけれどいる?』と言われ、着物とファストファッションを組み合わせたら面白いんではないかと考えた」と話した。

クシナ役のキャスティングについては、「撮影の 3 日前までタイトルロールのクシナ役の子役が見つかっていない状況で、『どうやって撮るんだ?クシナは不在で撮るか』という状況になったんですが、ヘアメイクの林さんが見せてくれた作品撮りの郁美カデールさんの写真が、もうクシナだったので、その日のうちに会いに行ってお願いしました」と奇跡のキャスティング秘話を語った。

奇稲<クシナ>という役名に関しては、「クシナというキャラクターは、私は手塚治虫の『奇子』というマンガの主人公に近いものを想像していたので、『奇』という漢字を使った名前で探していたら、『ヤマタノオロチ』に奇稲田姫というお姫様がいたので、そこからもらいました」と説明。

小野みゆき演じるクシナの祖母・鬼熊<オニクマ>の名前は、「強いものの組み合わせで考えました。でも愛らしい響きがあって。調べたら、鬼熊事件(1926年)というのがあって、この物語にリンクしている部分があったので、これしかないと思いました。」と話した。

大阪アジアン映画祭での上映から本作の公開まで 2 年かかった理由について、「公開はしないでおこうと思っていたんですけれど、配給の方と大阪アジアン映画祭のプログラマーの暉峻さんが会った時に、暉峻さんが『クシナ』のことを気にかけてくださっていて、『あの映画、面白かったのに、公開しないのかな?』という話をしてくださって、それをきっかけに、配給が決まりました」と感謝の意を表した。

ニューヨークの Japan Cuts での上映に参加したそうで、日本とアメリカでの観客の感想の違いを聞かれた監督は、「日本では、『これ(蒼子)は人類学者ではない。間違っている』と、私が敷いた設定に対する指摘のコメントをもらったんですけれど、アメリカのお客さんからは、『彼女は人類学者なのに、どうしてそういう行動に出たのか?』という、似ている質問だけれど、私が作った映画に対して掘り下げていく感じがしました」とのこと。

速水監督は、今後の抱負として、「日本には長い歴史があって、日本の神話もあるので、それを活かしたファンタジーを作って世界に発信していきたい」と語った。
アップリンク渋谷での公開に伴い、番組での裏話もチェックしてみては如何だろうか。

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映画『クシナ』概要

出演:山本真由美 橋本一郎 島侑子 中村有
鶏冠井孝介 紺野ふくた
監督:速水萌巴 脚本:高橋知由 撮影:渡邉拓海 浅津義社 音楽:重盛康平
2018 / 日本 / カラー / 83 分 / 16:9 / stereo
www.anafusa.com
Twitter:@anafusa_movie facebook: anafusamovie
アップリンク吉祥寺にて公開中ほか全国順次公開

▼予告編映像

<STORY(あらすじ)>
専業主婦の飯塚美希(山本真由美)は、ブランドネーム開発をしている夫・由則(橋本一郎)に対して不満を持っている。ある日、由則の仕事のパートナー・林多香子(島侑子)とその夫・充(中村有)とともに、別荘を借りて 2 組の夫婦で 5 日間の休暇を過ごすことになった。しかし、現地に着くやいなや、由則と多香子は急遽発生した仕事上のトラブルを解決するため別行動に。美希と充は不満かと思いきや、実は二人は隠れて浮気していたのだった。その夜、由則が話す仕事の思想を聞いた美希は、由則との間にある溝が埋まらないことに気づいてしまい…。森の中で出会った訳あり野鳥カメラマン(鶏冠井孝介)を巻き込み、美希はどのような決断を下すのか?

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