来年開場60周年を迎える日生劇場で6月22日、主催公演ラインアップ発表と記念ロゴ発表の記者会見が行われました。
【日生劇場】
東京・有楽町にある日生劇場は、1963年にベルリン・ドイツ・オペラの『フィデリオ』でこけら落とし公演を行って以来、オペラと児童向け作品を中心に様々な舞台を上演しています。
今回の会見を女性記者2名がリポートします。
【60周年記念ロゴ披露】
60周年記念ロゴ披露は、日生劇場理事長・松山保臣と芸術参与・粟國淳で行われ、披露されたロゴは、日生劇場が60年に亘り積み重ねてきた歴史や想いが込められ、それを日生劇場の象徴の一つである劇場内の螺旋階と右上がりの「60」の数字でデザインされていました。
主催者挨拶では、日生劇場理事長・松山保臣より、「これからも舞台という非日常的な空間を通して、皆様に夢の世界をお届けし続けたい。これからもご声援をよろしくお願いします。」と力強く語った。
【日生劇場主催公演ラインアップ発表会見】
来年開場60周年を迎える日生劇場主催公演ラインアップ発表には演出家6名が一堂に登壇する会見となり、『NISSAY OPERA』より『メデア』『マクベス』『午後の曳航』の3作品と、『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』より『精霊の守り人』『せかいいちのねこ』『くるみ割り人形』という祝祭感あふれる計6作品の上演が発表された。
【『NISSAY OPERA』とは】
オペラをより多くの方に楽しんでもらいたい!という思いから、一流の舞台をお求めやすいチケット料金でお贈りするNISSAY OPERA。
『NISSAY OPERA 2023』にては、
日本初演となるケルビーニ作曲『メデア』、
日生劇場では53年ぶりのヴェルディ作品となる『マクベス』、
ドイツ語版舞台上演日本初演となる三島由紀夫原作『午後の曳航』(東京二期会との共催公演)の3作品の上演を発表した。
【<1>オペラ『メデア』】
ギリシャ悲劇の傑作を原作としたオペラ『メデア』はケルビーニの代表作です。
人物の情念が緻密に描かれ、演劇と音楽が見事に融合したその作品構成は、ブラームスから「劇的音楽の頂点」と絶賛されています。ケルビーニ作品の日本における上演歴はほぼ皆無で、『メデア』の上演は、これが日本初演となります。
指揮は、オペラ・シンフォニーの両分野で国際的な活動を展開する園田隆一郎、演出は、日生劇場開場50周年記念特別公演『リア』を演出して以来、栗山民也が10年ぶりに登場します。
栗山さんは、「不条理であり、そして、矛盾に満ちている。それが“人間の姿”だと思います。“表”と“裏”、“喜劇”と“悲劇”、“愛すること”と“憎むこと”、そして“正気”と“狂気”。それが『メデア』の趣旨となっています。心に残る作品にしたいと思います」と力強く語りました。
メデア役には岡田昌子、中村真紀を起用。2人のディーヴァとともに、王女「メデア」の壮絶な復讐劇にどう取り組むのか、ご注目ください。
<公演概要>
NISSAY OPERA 2023『メデア』
日程:2023年5月27日(土)、28日(日)予定
指揮・園田隆一郎、演出・栗山民也、管弦楽・新日本フィルハーモニー交響楽団
【<2>オペラ『マクベス』】
〈良いは悪い、悪いは良い〉―国を救ったかつての英雄は、魔女の予言を信じ権力を求めるあまり、やがて独裁者へと変貌する。そして、その暴力が自らを破滅へと導く―。シェイクスピア四大悲劇の名作が、オペラの巨匠ヴェルディによって、圧倒的な迫力の音楽で描き出されます。
指揮は、2017年から2020年にかけて、びわ湖ホールにてワーグナーの『ニーベルングの指環』全作上演を達成した泰斗・沼尻竜典。演出はイタリア・オペラの第一人者である日生劇場芸術参与・粟國淳。
粟國は、「一度は演出してみたいとずっと思っていた作品だった」と明かし、「オーディションの最中なので、早く稽古をしたい」と意気込みました。
日本を代表する二人のマエストロがタッグを組んで挑む、ヴェルディの傑作オペラにご期待ください。
<公演概要>
NISSAY OPERA 2023『マクベス』
日程:2023年11月11日(土)、12日(日)予定
指揮・沼尻竜典、演出・粟國淳、管弦楽・読売日本交響楽団
【<3>オペラ『午後の曳航』】
戦後ドイツを代表する作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェが、敬愛する三島由紀夫の小説を原作にオペラ化し、1990年ベルリン・ドイツ・オペラで初演されました。その後、指揮者ゲルト・アルブレヒトの企画で日本語版が2003年読売日本交響楽団により演奏会形式で初演。2006年にはその改訂版がザルツブルク音楽祭で初演されるなど、多くの人々に愛され続けている作品です。
今回、日生劇場では、作曲家同様に三島文学を深く愛する宮本亞門による演出で、2005年改訂ドイツ語版を上演します。宮本亞門が三島由紀夫原作のオペラを手掛けるのは、日仏両国で絶賛を博した『金閣寺』に続き2作目。宮本は、三島文学の魅力は“深み”と“生々しさ”だと明かし、「いつか自分が演出をすることができたらと思っていた」と興奮気味に語りました。そして、「舞台は意味があるのか、ないのか、という問いを深く考えている時期です。だからこそ、正直言うと重いです。ですが、そこには喜びや、感動や、生きる希望や、見たいものが必ずあります。内容はとても痛いです。そして、恐ろしいです。そして、美しいです。
人間の本質を露骨に表に出している作品ですので、今の“現代人の悩み”そのものと言えるかもしれません。ぜひ劇場に遊びに来ていただきたい」と、本番への期待を膨らませながら語りました。
ドイツ語版としても、また舞台上演としてもこれが日本初演となる本作にご期待ください。
<公演概要>
東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2023『午後の曳航』〈共催公演〉
日程:2023年11月23日(木祝)、24日(金)、25日(土)、26(日)予定
指揮・アレホ・ペレス、演出・宮本亞門、管弦楽・新日本フィルハーモニー交響楽団
【日生劇場ファミリーフェスティヴァルとは】
1993年の日生劇場開場30周年を記念してスタートした夏休みの家族向け公演です。
演劇やミュージカル、バレエなど、幼稚園や小学生のお子さまにも分かりやすく、また大人の方にも楽しんでいただける、本格的な作品を上演しています。
『日生劇場ファミリーフェスティヴァル2023』では、
大人気ファンタジー小説初の舞台化となる音楽劇『精霊の守り人』、
画家・絵本作家ヒグチユウコ作品初の舞台化となる舞台版『せかいいちのねこ』、
“日生劇場版”として新たに改訂演出・振付される谷桃子バレエ団『くるみ割り人形』
という3作品の上演が発表されました。
【<4>音楽劇『精霊の守り人』】
世界中で愛されるファンタジー小説が、世界で初めて舞台化されます。
これに対して一色は、「日生ファミリーフェスティヴァルは、今日まで全国の子どもたちに演劇を提供してきた伝統のある事業であり、60周年に『精霊の守り人』が選ばれたのも何か意味があるのではないかと、自分なりにこの作品と改めて向き合う日々を過ごしています。私の周りには、ニッセイ名作劇場を見て演劇を始めたという人がとても多いため、人生を変えてしまうほどのパワーとエネルギーが劇場にはあります。そのパワーを信じて今回も取り組んでいきたいです。」と日生劇場の魅力について語ってくれました。また、『精霊の守り人』という作品に関しては、「これを通して、今の時代に何を届けたいのか、何を届けられるのか、なぜ届ける意味があるのか、(原作の)上橋先生と議論を重ねています。何物でもないこの物語の主人公が、自分の運命と向き合い、周りの人を巻き込みながら、それが大きな力となって世界を変えていくお話です。人間のエネルギーの素晴らしさをうたっている讃歌であると思って、皆さんにお届けしたいです。」と今後に期待を膨らませていました。
<公演情報>
日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2023
音楽劇『精霊の守り人』
日程:2023年7月29日(土)~8月6日(日) 12回公演予定
原作:上橋菜穂子作「精霊の守り人」(偕成社)/脚本:井上テテ/演出:一色隆司(NHKエンタープライズ
【<5>舞台版『せかいいちのねこ』】
雅か・絵本作家ヒグチユウコの絵物語『せかいいちのねこ』が、初の舞台化となります。
この作品について、山田は、「ヒグチユウコ原作の“絵物語”は、生命力溢れた絵画と、びっくりするほどの余白、そして言葉という独特な世界観の本で、今回はそれを舞台化します。舞台は、私たちが生きている世界のように、自分自身でページをめくらなくても、どんどんとページが開かれていく場所です。それに相応しく、生命のポテンシャルがとても高い、動きやセリフ、歌、音楽、色彩といった舞台全体の躍動と静寂により、大きな生き物のような独特な舞台を作り上げたいと思っています。」と生き生きと話していました。また、日生劇場の魅力に触れつつも、今作品に対して、「子どもたちにとって、幕が開く前から閉まるまで、ずっとドキドキが止まらないような、新しい劇場体験になれば良いなと思っています。子どもたちや親御さんがおうちに帰っても、語り合えるような、そして心に残る作品を作りたいと思います。」と意気込みました。
<公演情報>
日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2023
舞台版『せかいいちのねこ』
日程:2023年8月19日(土)・20日(日)予定
原作:ヒグチユウコ作「せかいいちのねこ」(白泉社)/脚本・演出・振付:山田うん/出演:人形劇団ひとみ座、Co. 山田うん
【<6>谷桃子バレエ団『くるみ割り人形』】
60周年を記念してチャイコフスキー三大バレエとして名高い『くるみ割り人形』の上演が決定しました。
長く愛されてきた谷桃子バレエ団の谷桃子の演出・振付版を、同団芸術監督の髙部が“日生劇場版”として、新たに改定演出・振付します。日生劇場では、敷居が高いと思われることが多いバレエ作品を数多く上演してきたことも魅力の一つです。これに対して髙部は「この機会を最大限に生かし、バレエの素晴らしさを子どもたちに伝えていきたいといつも思っています。」と嬉しそうに語っていました。
そして今回は初となる試みの“子役オーディション”の実施が2023年3月に予定されています。『くるみ割り人形』について、「この作品は、師匠である谷桃子先生が亡くなる前に、『私が一番しっかりと振付をした作品だから、大事に踊っていってね』と言われたことを今でも思い出します。この作品は『白鳥の湖』と比べると我々のバレエ団ではそれほど多く上演してきたわけではありませんが、日生劇場のお力を頂戴して、子どもたちと作る新たな『くるみ割り人形』が出来たらと思っております。“心で踊るバレエ団”として団員一同力を合わせて、日生劇場で素晴らしい『くるみ割り人形』を上演できるよう頑張りたいと思います。」と力強く語っていました。
<公演情報>
日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2023
谷桃子バレエ団『くるみ割り人形』~日生劇場版~
原作:E.T.A.ホフマン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 台本原案:マリウス・プティパ/原振付:レフ・イワーノフ 演出・振付:谷桃子 芸術監督 改訂演出・振付:髙部尚子 出演:谷桃子バレエ団 指揮:井田勝大/演奏:シアターオーケストラトーキョー
日程:2023年8月25日(金)・26日(土)・27日(日) 予定
報道陣の要望で、笑顔での集合撮影という和やかな会見となった。
【information】
財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
住所:東京都千代田区有楽町 1-1-1
日生劇場HP: https://www.nissaytheatre.or.jp/
NISSAY OPERA 公式HP: https://opera.nissaytheatre.or.jp/
◎ACTRESS PRESS編集部
◆文:左~石井葵(日本大学藝術学部)、橋詰ゆな(青山学院大学)
◆撮影:Scketto:https://www.scketto.com/
記者連載記事:https://actresspress.com/category/report/