総務省「異能(Inno)vation」が、2023年に10年目という大きな節目を迎え、2023年1月25日に東京・日比谷ミッドタウンにて「OPEN異能vation」が開催された。
本年度も応募・協賛企業ともに多数参加しているタイなどの海外のネットワーク拠点とも映像を通じてリアルタイムで中継を行った。会場内には過去10年の歴史とともに受賞作品を多数展示し、実際に体験できるブースも設置された。
今回は女子大生の3名が現地で“異能”の展示を体験・リポートします。
10年目を迎えた「OPEN異能(Inno)vation」。
本年もプログラム推進のキーパーソンとなる方々が登壇し、異能vationプログラム誕生の経緯やこれまでの10年間の実績やデジタル環境の変遷、これからの世界・日本で必要とされる人材について語っていただいた。
【古坂大魔王氏】
推進大使5年目の古坂大魔王は、「最初に総務省の方から“変な人”というワードを聞いた時は違和感があったが、イノベーションを起こすために、世の中はそういう人たちを育てようとしている」と話し、10年間に渡る異能vationの取り組みを振り返った。
【総務副大臣・柘植芳文氏】
「応募数の増加から、異能vationは着実に裾野を広げ、破壊的なイノベーションに貢献する社会的な雰囲気を作っている」とコメントし、従来の発想に囚われず、自分を信じて新しい課題にチャレンジするエネルギーこそが、新たな未来を切り開いていくと、プログラムへの期待を語った。
【株式会社コーエーテクモホールディングス
代表取締役会長・襟川恵子氏】
「異能(Inno)vation」の応募件数が年々増加していることに喜びを感じ、異能vationに集まった多彩な才能が日本のみにとどまらず、海外に進出することで「世界に貢献し、日本の未来が明るくなる」と語った。
【総務省国際戦略局 局長・田原康生氏】
異能vationの1年目が担当課長だったこともあり、「プログラムがここまで大きくなったことが大変嬉しい共に、ここまでの成長を遂げることができたのは、プログラマーやスーパーバイザーなど、皆様の尽力の賜物に他ならない」と深く感謝を述べた。また、来年度からは新たにスタートアップ支援の事業を3億円規模の予算で進めていきたいと更なる発展を誓った。
【元総務大臣 衆議院議員・新藤義孝氏】
「常に世の中を変えていくのは新しいアイディアと価値観の破壊と創造の繰り返しであり、政府としてきっかけを作り、世の中を変える手伝いをできることが本望」だと本プログラムへの熱い気持ちを語った。また、アイディアを出してくれた方や皆様の御協力のおかげで、ひとつの時代を作り、10年目の節目を迎えられたことに祝辞の言葉を添えた。
展示ブースを体験して、それぞれのリポーターが気になった“異能”を紹介します。
【ココダヨ(株式会社ゼネテック)】
災害時、大切な人と即座に位置情報を共有できる安心・安全のための機能をもつアプリ、ココダヨ。
3.11東日本大震災では家族の安否確認が上手く取れなかったことによる事故が多発した。このアプリではそのような事故を未然に防ぐために災害速報と連動し位置情報を発信できるサービスを提供している。また、不審者情報通知機能も加わり災害時だけではなく、お子様から高齢者まで家族の安全を見守ることができる、大切な人を大切にという想いに寄り添ったアプリである。
https://www.cocodayo.jp
【Hutzper】
検査員の高齢化・採用難による人手不足や長時間作業による人的ミスなどの製造業の課題に対する解決手段として登場したのがこの画像認識AI「Hutzper」である。
「はやい、やすい、巧い、AIを」というキャッチコピーを掲げ、圧倒的なコストパフォーマンスと人の目と同等の精度を実現している。どうしても限界のある人間の力に代わり最新テクノロジーを労働力とすることで、更なる品質向上や生産性の向上を図ったAIの導入。AIが人間の仕事を代替していく時代の到来を実感した。
https://hutzper.com
【あわベビ】
天野萌美(早稲田大学)
「なんで泣いてるのかわからない」子育て中の多くのお母さんお父さんが悩み事としているのが赤ちゃんの泣き声である。あわベビはそんなお母さんお父さんの悩みを解決するため赤ちゃんの泣き声を分析し泣き声を「きく」から「みる」に可視化することを目的としたアプリである。泣き声を可愛らしい色と形の泡に変換し、赤ちゃんが「なぜ泣いているのか」「何を求めているのか」という子育て中の課題にお母さんお父さんが向き合いやすいように、そしてその課題を乗り越えることで赤ちゃんと一緒に成長していることを実感できるように、設計されていることに暖かさを感じた。また孤独感や不安感を感じやすい子育て中のお母さんお父さんのため、オンライン相談ツールやオンラインパパママコミュニティという機能も充実しており、アプリを通して多くの人が「子育ては一人でするものではない」という認識を高めるきっかけになるアプリであると感じた。
https://awababy.tech
<田牧詩乃>
■rsp.(リーマンサット・プロジェクト)
文理を問わず、様々なコミュニティやクリエイターとコラボレーションし、「宇宙を身近に」するのではなく、「身近なものを宇宙に」繋げる活動を続けている。
私が手にしているのは、キューブサットと呼ばれる約10cm角の超小型人工衛星。衛星は国際宇宙ステーションから宇宙へ放出され、地球と交信できる。周囲には太陽光パネルが付いており、発電も可能。小さな衛星に込められた大きな夢を語る開発者の顔は輝いており、心躍る時間を過ごすことができた。
https://www.rymansat.com
【TETSUJIN-AUDIO VISUAL】
ロックスターに憧れて中学校の掃除時間にほうきをかき鳴らした記憶。幾つになっても夢を見て生きたい、その想いから生まれた“ほうきギター”が更に進化。センサーと音楽アルゴリズムによる感覚的な奏法が音楽表現を身近にする“ほうきギター”で、音楽経験や国籍、言語を超えたノンバーバルコミュニケーションを世界に広げていく。
誰でも自由に弾くことができる“ほうきギター”。ギターが弾けるようになりたい!と思っていた私の心を射止めた。ほうきの柄の部分を押さえることで音階を調整し、柄と穂を繋ぐプラスチックの部分をかき鳴らすとセンサーが反応し、音を出すことができる。
https://www.tetsujin-audiovisual.com
【ころやわ(株式会社マジックシールズ)】
下津心夢(学習院大学)
こちらの「ころやわ」という商品は、もし転倒したとしても、床が衝撃を受け止め、骨折を防いでくれる画期的なものです。一般的なフローリングと異なる点が、「ころやわ」の裏には吸収版が付いていて、これが転倒時の衝撃緩和材となっています。歩行時は硬く安定していて、車椅子での移動時も凹まない点もポイントです。これから高齢化が加速していく日本では、病院や福祉施設などにおいて即戦力になる開発だと思いました。既に400施設以上に導入されています。
https://www.magicshields.co.jp/coroyawa/
【取材感想】
「OPEN 異能 vation」は、輝く“変な人”を見つけ出すため行われているプログラムであると感じた。会場の方々にお話を伺ってみると、こんなものがあったらいいという希望や強い信念を原動力に、開発研究に取り組まれている。“変な人”を“変な人”と捉えるか、“イノベーションを起こしている人”と捉えるか、私たちの見方次第で、この先の未来は大きく変わるのではないかと思った。色々な物の見方、捉え方ができるよう、教養を深めたい。
会場にいた開発者は、常識外な挑戦をしている方々で、常識外な挑戦だからこそ理解を得ることが難しい側面もあるが、ひたむきにチャレンジする姿勢を見て、私も今日から頑張ろうと思った。(田牧詩乃)
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【異能vationプログラムとは】
異能vationプログラムは、ICT(※)分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援します。 既存の常識にとらわれない独創的な「変わった事を考え、実行する人(通称「へんな人」)」の、「なにもないゼロのところから、イチを生む」失敗を恐れない果敢な挑戦を支援するとともに、そうした方々が交流し、異能と異能が掛け合わさることで、さらなる独創的な発想が生まれるような環境を提供します。 人類史上、既存の枠にとらわれない破壊的なイノベーションを起こしてきたのは、こうした奇想天外でアンビシャスな技術課題に挑戦する「へんな人」でした。異能vation プログラムは、こうした人たちがのびやかに活躍することが日本の新たな未来を創る、と信じて取り組んでいるものです。
※リポーター写真は、周囲に人がいないことを確認し撮影時のみマスクを外しています。
◎ACTRESS PRESS編集部
◆取材・文:左~天野萌美(早稲田大学)、下津心夢(学習院大学)、田牧詩乃(法政大学)
◆コーディネート:Scketto:https://twitter.com/scketto1
記者連載記事:https://actresspress.com/category/report/