ミュージカル「FLOWER DRUM SONG」が、公演関係者の体調不良による2公演中止を経て、4月24日(日)に開幕し、4月30日(土)大阪・森ノ宮ピロティホールで無事に全公演を終えた。
この作品は、アジア人のみで上演しなければならないため、ブロードウェイでもなかなか上演が叶わず、ロジャース&ハマースタインの“隠れた名作”ともいえる。これをトニー賞作家のデビット・ヘンリー・ファンが大胆に改定し、2022年、リバイバル版としてついに日本初上陸を果たした。日本版の演出・振付は上島雪夫が手掛けた。
1960年代のサンフランシスコ・チャイナタウンが舞台の本作では、不法移民や人種問題に加え、そこに住む人々の恋模様が描かれている。西洋と東洋の文化が融合したような、華やかで賑やかなショーナンバーとともに繰り広げられるストーリー。
主演を務めたのは、ワン・夕一役の古屋敬多(Lead)とメイ・リー役の桜井玲香。瑞々しいカップルを演じる二人の、伸びやかで高音の映える歌声も見どころの一つ。その他にも、父親ワン・チー・ヤンは実力派のミュージカル・スターである石井一孝、シアターエージェントのマダム・リタ・リャンは彩吹真央、劇団のスターであるリンダ・ロウはフランク莉奈、ターの恋敵となる”チャオ役は砂川脩弥、ハーバード役は泰江和明、そしてチン役は八十田勇一が好演するなど、まさに適材適所のキャスティング。
実際に、稽古場取材会では、石井一孝自身も「キャスティングが見事にはまっている」「主役二人が初々しさを持っている」と、本番への期待を膨らませながら語っていた。
この作品にひかれる理由の一つは、「新しいものを作るには、まず古いものを知らなくっちゃ」という本作の台詞にあるように、新たなものを取り入れて成功する頑固な父親と、伝統に敬意を払い創作していくことに目覚めた子との鮮やかな対比に違いない。赤を基調とした舞台セットには、随所に中国らしいモチーフがあしらわれ、本格的なチャイニーズ・オペラの衣裳と華やかなショーの衣裳も相まって、唯一無二の舞台空間を創り出しているそのこだわりにも心躍る。そして何よりも、ミュージカル黄金時代をヒットメーカーであるロジャース&ハマースタインの作品らしく、キャッチーなフレーズもあり耳馴染みの良い楽曲の数々が見どころ。怒涛の音楽に身を任せているだけで、しばし日常を忘れ、サンフランシスコ・チャイナタウンへの小旅行へ行った気分になっただろう。そしてまた、このご時世だからこそ体感したい、壮大なオーケストラの演奏も劇場を沸かせた。
劇場全体で”ミュージカルらしさ”を存分に感じさせた本作。この隠れた名作は、時を越え、今の時代を生きる人々の心に届いたことだろう。すでに再演を切望している。
<参考:稽古場での舞台会見>
https://actresspress.com/reika_sakurai-stage202204/
【公演概要】
ミュージカル「FLOWER DRUM SONG」
<出演>
古屋敬多(Lead)、桜井玲香
フランク莉奈、砂川脩弥、泰江和明
八十田勇一、彩吹真央
石井一孝 他
<東京公演>
公演日:4月24日(日)〜4月27日(水)
会場:日本青年館ホール
<大阪公演>
4月29日(金)、30日(土)
会場:森ノ宮ピロティホール
公式HP:
http://flowerdrumsong.jp
公式Twitter:
https://twitter.com/flowerdrumsong
【桜井玲香・プロフィール】
桜井玲香
2011年から2019年まで乃木坂46として活動。キャプテンを務めた。卒業後は、女優業に転身。ファッション誌「CLASSY.」(光文社)のレギュラーモデルを務めながら、舞台でも活躍をつづけている。
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◆文:梅田陽菜(慶應義塾大学)
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